上に逆らえない政治家に、何ができるのか?――犬伏秀一という男

上に逆らえない政治家に、何ができるのか?――犬伏秀一という男

政治家って、誰のためにいるんでしょうね。

国民のため? 地域のため?

もちろん、そう答えるでしょう。

でも、実際はどうなんだろう。

上には逆らわない。組織には逆らわない。自分の立場が悪くなることは言わない。

そんな政治家を見ていると、私は違和感を覚えます。

いや、違和感どころではない。腹が立つこともあります。

それで、誰のための政治家なの?

そんなことを考えている私が、ぜひ知ってほしいと思っている人がいます。

犬伏秀一さんです。

犬伏さんとは、ある団体を通じて知り合いました。

その後、私の対談番組にも出演していただきました。

第一印象は、曲がったことが嫌いな人。

そして、付き合う中で感じたのは、相手が誰であっても、言うべきことは言う人だということです。

上の立場の人にも、遠慮しない。

おかしいと思えば、おかしいと言う。

でも、これがなかなかできない。

上に嫌われたくない。

波風を立てたくない。

自分の立場を守りたい。

そう考えて、言うべきことを飲み込んでしまう。

私だって、そんな場面に出くわすことがあります。

でも、それでいいのか?

◆この男、苦難の数が半端じゃない

犬伏さんの本を出版しました。

『必要なことは全て自衛隊から教わった 猫に鰹節、大田区に犬伏』

という本です。

このタイトルも、なかなかでしょう(笑)。

本の第一章には「苦難に見初められた男」という見出しがあります。

これが、実に犬伏さんらしい。

3歳で両親が離婚。10歳で父親が亡くなる。

自衛隊に入り、アメリカへ渡り、帰国して事業を始める。

旅行会社を成長させ、売上高20億円にまで育てた。

ところが、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ。

旅行業界は大打撃を受け、犬伏さんの会社も大きな影響を受けます。

普通なら、これだけでも一冊の本になりそうです。

 

でも、犬伏さんの人生は、それだけでは終わりません。

母親との関係に悩み、倫理法人会で学び、自分自身と向き合う。

そして政治の世界へ。

この人、いったい何回、人生をやり直しているんだろう。

いや、やり直しているんじゃない。

何があっても、その先へ進んでいるんです。

私は、こういう人が好きです。

何の苦労もなく、順調に出世した人より、泥臭く生きてきた人。

失敗したことがない人より、失敗しても逃げなかった人。

もちろん、苦労すれば偉いという話ではありません。

苦労をどう受け止め、そこから何を学び、どう生きてきたのか。

 

◆正しいと思うことを、なぜ言えないのか?

私が犬伏さんに一番共感するのは、ここです。

曲がったことには、上の人間にも意見する。

当たり前のことのように思いませんか?

でも、実際には当たり前ではないんですよね。

組織にいると、いろいろあります。

「それは言わない方がいい」

「今は黙っておいた方がいい」

「そんなことを言ったら、あなたが損をするよ」

親切心で言ってくれる人もいるでしょう。

自分が損をするから黙る。

自分の立場が悪くなるから黙る。

それを続けていたら、いったい何のために、その場所にいるのでしょうか。

もちろん、何でもかんでも反対すればいいわけではありません。

自分の考えが間違っていることだってある。

だから、確かめる。考える。相手の話も聞く。

そのうえで、違うと思ったら、違うと言う。

それが大事なのではないでしょうか。

犬伏さんには、そういう姿勢を感じます。

そして、もう一つ。

犬伏さんは、人のことを思う人です。

私は、ここを切り離してはいけないと思っています。

ただ強い言葉で批判するだけなら、誰にでもできます。

でも、相手のことを思い、その先にいる人たちのことを考えて、それでも言わなければならないことがある。

嫌われたくないから黙るのと、人のために言うのとでは、まったく違う。

 

◆政治家の前に、人間だろう

犬伏さんは、大田区議会議員を6期務めた人です。

航空自衛隊で学び、アメリカで働き、経営者として成功も苦難も経験してきた。

でも、私が犬伏さんを紹介したい理由は、人間として、面白いからです。

政治家を評価するとき、政策はもちろん大切です。

実績も大切です。

でも、私はそれ以前に、どういう人間なのかを知りたい。

苦しいときに逃げる人なのか。

自分の利益を優先する人なのか。

それとも、人のために、自分が不利になっても動ける人なのか。

そんなことを考えます。

この本には、犬伏さんの幼いころの家庭環境や、お母さんとの葛藤も書かれています。

決して、最初から何もかも分かっていた人ではありません。

悩み、苦しみ、時には自分の考え方を変えながら生きてきた。

そこも、犬伏さんの人間らしさだと思うのです。

 

◆私は、こういう人がいることを知ってほしい

なぜ、この本を出版したのか。

一番の理由は、犬伏秀一という人間を、もっと多くの人に知ってもらいたかったからです。

本書では、工藤直彦さんが話相手人となり、私も対談に加わっています。

政治の話だけではありません。

自衛隊のこと、事業のこと、家族のこと、人生のこと。

犬伏さんの話を聞きながら、私は改めて思いました。

政治家の肩書だけを見ていては、その人の本当の姿は分からない。

どんな人生を歩んできたのか。

何に悩んできたのか。

何を譲れないと思っているのか。

そこまで知って、初めて見えてくるものがあります。

私は、この本を選挙のための本にはしたくありませんでした。

犬伏秀一という一人の人間を知ってもらう本にしたかったのです。

 

◆「犬伏に会って良かったな!」

犬伏さんは、本書の中で、こんなことを語っています。

「犬伏に会って良かったな!」

そう言われる人生を送りたい、と。

私は、この言葉が好きです。

どれだけ偉くなっても、どれだけ肩書が増えても、最後に残るのは何でしょう。

あの人に会って良かった。

あの人がいてくれて良かった。

そう思ってもらえることではないでしょうか。

犬伏さんには、国政という場でも自分の考えを語ってほしい。
ただ、これは私個人の思いです。

政治家としての考えや行動については、読者の皆さんにも、それぞれの目で確かめてほしいと思っています。

さて、ここまで犬伏さんのことを書いてきましたが、実は自分自身にも問いかけているんです。

私は、言うべきことを言っているだろうか。

人のために動いているだろうか。

自分の立場を守るために、黙っていないだろうか。

そして、

「釣部に会って良かった」

と言ってもらえる生き方をしているだろうか。

まだまだですね。

いや、そんなことを言っている場合じゃない。

私も、実践しなくちゃ。

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