科学で証明されていないことは、語ってはいけないのか?

科学で証明されていないことは、語ってはいけないのか?

◆「ここまで書けるんだ」

最近、Facebookを見ていて、ある広告に目が止まった。

がん治療を行っている医療機関の広告だった。

ステージ4のがん患者に対する治療や、がんが消失したという症例が紹介されていた。

「へえ、ここまで書けるんだ」

思わず、そう思った。

私は出版社を経営している。

健康や医療に関する本も出版しているので、薬機法などの法律には気を使う。

何を書いてもいいわけではない。

特に、がんのように命に関わる病気については、表現一つにも気を使う。

ところが、世の中を見渡してみると、がんが消えた、難病が改善した、自然治癒力で病気が治ったという話は、あちこちで発信されている。

もちろん、書いてあることがすべて事実とは限らない。

法律上、問題がないとも限らない。

でも、私は考えた。

ある医療機関が治療結果を紹介することと、出版社が従来の医学とは異なる考え方を紹介すること。

この二つは、どう違うのだろう。

そして、もっと根本的な疑問が浮かんだ。

科学で証明されていないことは、語ってはいけないのだろうか。

 

◆胃潰瘍の原因はストレスだった?

昔、胃潰瘍といえば、ストレスや胃酸などが主な原因だと考えられていた。

私も、そういう話を聞いて育った。

ところが、オーストラリアの二人の研究者が、胃の中にいる細菌に注目した。

バリー・マーシャルとロビン・ウォレンだ。

彼らは、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍に深く関係していることを明らかにした。

当初、この考え方は簡単には受け入れられなかった。

胃の中は強い酸性だ。そんなところに細菌が住みついているという話自体、当時の常識からすれば意外だったのだ。

しかし、研究が進むにつれて、その関係が明らかになっていった。

今では、ピロリ菌の除菌は胃潰瘍の治療や再発予防に重要な役割を果たしている。

二人は2005年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

医学の常識が変わったわけだ。

ここで私は考える。

もし、最初に彼らの話を聞いた人たちが、

「そんなことはあり得ない」

「科学的根拠がない」

と言って、研究すること自体をやめさせていたら、どうなっていただろう。

もちろん、これまでの常識と違うことを言えば、それが正しいというわけではない。

間違った仮説だって、いくらでもある。

だから、調べる。

実験する。

確かめる。

そして、間違っていたら修正する。

私は、そこに科学の面白さがあると思っている。

 

◆20年以上前に聞いた、忘れられない言葉

私は20年以上前、森下敬一先生の月刊『自然医学』の出版部に勤務していた。

森下先生は、腸造血説など、従来の医学とは異なる考え方を提唱していた方だ。

先生の周囲では、学校では習わなかったような話が飛び交っていた。

「ソマチット」

「生体内原子交換」

「がん細胞は消滅する」

「硅素」

「波動医学」

正直に言えば、当時の私には、何を言っているのか十分に理解できないことも多かった。

「本当にそんなことがあるのかな?」

そんな疑問を持ちながら話を聞いていた。

でも、不思議なもので、分からなかった言葉ほど記憶に残ることがある。

それから20年以上が過ぎた。

2026年、私は鹿児島へ行った。

そこでの出会いがきっかけとなり、山﨑教男さんという人物を取材することになった。

山﨑さんの話を聞いていると、懐かしい言葉が次々と出てきた。

ソマチット、硅素、がん細胞、生命の仕組み。

「えっ、またこの話か!」

驚いた。

20年以上前に聞いた言葉に、再び出会ったのだ。

しかも、山﨑さんは、それらを一つひとつ独立した話としてではなく、生命の仕組みとしてつなげて考えていた。

私は、いろいろ質問した。

「それは、どういうこと?」

「なぜ、そう考えるの?」

「本当に、そんなことが起きるの?」

聞けば聞くほど、疑問が増えていった。

でも、面白かった。

そして、山﨑さんが長年考え続けてきたことを、38の生命仮説として一冊の本にまとめることになった。

 

◆「科学的根拠がない」。それで終わり?

例えば、ソマチットだ。

血液などに存在するとされる、極めて小さな生命体。

環境によって姿を変えるともいわれている。

しかし、現在の科学では、ソマチットが独立した生命体であることは確立されていない。

「科学的根拠がない」

そう言われれば、そのとおりなのだろう。

でも、私はそこで聞きたくなる。

「じゃあ、顕微鏡で動いているものは何なの?」

小さな粒子が動いている映像を見せられたら、誰だって気になるだろう。

ただし、動いているから生命体だとは限らない。

液体の流れで動いているのかもしれない。

ブラウン運動のような物理現象かもしれない。

細胞の破片や、すでに知られている物質かもしれない。

だったら、それを確かめればいい。

何が見えているのか。

何でできているのか。

どういう条件で動くのか。

同じ現象を再現できるのか。

そこまで調べて、初めて分かることがある。

私は、科学的根拠がないものを、証明された事実として扱おうとは思わない。

しかし、科学的根拠がないことと、調べる価値がないことは違うと思っている。

 

◆冤罪事件の取材でも、同じことを感じた

私はジャーナリストとして、刑事司法の問題も取材してきた。

冤罪事件では、警察や検察が描いた筋書きが、後になって覆されることがある。

捜査機関が正しいと考えていたことが、実は間違っていた。

そんなことが現実に起きている。

もちろん、刑事司法と医学は違う。

科学的な仮説の検証と、事件の真相を明らかにすることも同じではない。

それでも、私が取材を通じて感じてきたことがある。

権威があるから正しいとは限らない。

かといって、権威に反対している人が正しいとも限らない。

私は、少数派だから応援するというつもりもない。

話を聞く。

資料を調べる。

事実を確かめる。

それでも分からなければ、分からないと言えばいい。

取材とは、そういうものだと思っている。

 

◆売れる本だけを出していればいいのか?

私は、ときどき考える。

出版社の仕事とは何なのだろう。

万代宝書房は、何のために存在するのだろう。

すでに世の中で正しいと認められていることを本にする。

それも出版の仕事だ。

売れる本を出版する。

もちろん、それも大切だ。

出版社だって経営を続けなければならない。

私自身、売れる本をつくりたいと思っている。

でも、それだけでいいのだろうか。

世の中には、まだ十分に知られていない考え方がある。

従来の常識とは違うことを言う人もいる。

中には、間違っている人もいるだろう。

しかし、まだ確かめられていないこともあるかもしれない。

そうした人たちの話を聞き、疑問を投げかけ、読者に届けることも、出版社の仕事ではないだろうか。

もちろん、本にしたからといって、その内容が正しいと証明されたことにはならない。

特に医療や健康に関する情報では、仮説と事実を区別しなければならない。

治療効果を保証することと、生命についての仮説を紹介することも違う。

そこは大切にしたい。

でも、だからといって、まだ証明されていない考え方を一切出版しないというのも、私には違和感がある。

そもそも、すべてが分かっているのなら、研究する必要もない。

新しい本を書く必要もない。

分からないことがあるから、人は考える。

そして、誰かに伝えたくなるのではないだろうか。

 

◆だから「消えるのか?」なのだ

私が出版した本のタイトルは、

『がん細胞は、消えるのか?』

である。

「がん細胞は消える」と断定したわけではない。

「消えるのか?」と問いかけているのだ。

この違いは、私にとって大きい。

山﨑教男さんの38の生命仮説についても、私はすべてが正しいと思っているわけではない。

反対に、すべてが間違っていると決めつけるつもりもない。

がん細胞は、本当に元に戻ることがあるのか。

ソマチットとは何なのか。

硅素は生命とどのように関係しているのか。

確かめたいことは、まだまだある。

本を出版したからといって、取材が終わったわけではない。

むしろ、ここからが始まりだと思っている。

私は、科学者ではない。

だから、自分一人で科学的な結論を出すことはできない。

でも、ジャーナリストとして、疑問を持ち、取材を続けることはできる。

そして、出版社として、その過程を読者に届けることもできる。

科学で証明されていないことは、語ってはいけないのか?

私は、そうは思わない。

分からないことがあるなら、調べればいい。

疑問があるなら、聞けばいい。

仮説があるなら、確かめればいい。

最初から信じる必要もないし、最初から否定する必要もない。

信じるな! 疑うな! 確かめろ!

それが、私のジャーナリストとしての姿勢であり、万代宝書房の出版姿勢でもある。


【関連書籍】

『がん細胞は、消えるのか? 山﨑教男・38の生命仮説』

がん細胞、ソマチット、硅素、生命の仕組み。山﨑教男氏への取材を通じて、38の生命仮説を紹介した一冊。

 

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信じるな! 疑うな! 確かめろ! がん細胞は、消えるのか? 山﨑教男・38の生命仮説 

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商品紹介

信じるな! 疑うな! 確かめろ! がん細胞は、消えるのか? 山﨑教男・38の生命仮説    B6 196頁 釣部人裕 著 「がん細胞は、消えるのか?」 もし、そう問いかけられたら、あなたはどう答えるでしょうか。 「そんなことはあり得ない」と思うかもしれません。 反対に、「もしかしたら」と思う人もいるでしょう。 本書は、その…

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