稗田美喜さん――大義達成ですよ

稗田美喜さん――大義達成ですよ

◆最初は、万代宝書房大賞への応募相談だった

稗田美喜さんから、第3回万代宝書房大賞に応募したいと相談があった。

歴史の本だという。

ただ、歴史上の大きな事件を並べるのではなく、人にフォーカスしたいという話だった。

しばらくして、

『一隅を照らす日本の歴史(仮題)』

の原稿が送られてきた。

読んでみた。

正直、おもしろかった。

私が知っている人物もいる。

名前だけ聞いたことのある人物もいる。

初めて聞く名前もあった。

「こんな人がいたのか」

と思いながら読んだ。

結果、この作品は【優秀賞】になった。

その時、私はこんなコメントを出した。

歴史に埋もれた人物や出来事に光を当て、「歴史は家族である」という温かい視点で描かれています。知識を伝えるだけでなく、読む人に誇りと癒しを与える作品として評価しました。

 

私は、この本は絶対に出版してもらいたいと思った。

稗田さんは、歴史の研究家でも専門家でもない。

いわば、一般の人である。

だからいいと思った。

自分で歴史を学んで、

「こんな人がいた」

「こんなことがあった」

「これは知らなかった」

と驚く。

そして、自分はこう感じた、と書く。

私は、その視点がおもしろいと思った。

 

◆「歴史のif」も書きたかった

 編集していて、気になったところがある。

「考えざるを得ない歴史のif」

という小見出しだ。

そこに、こう書いてあった。

(もし鈴木が二・二六事件で暗殺されていたら?)歴史の事実を知っていくと、どうしても歴史のifを考えざるを得なくなります。
ifの歴史考、いずれ纏めてみたいとも思っています。

私は、この文章を残した。

「いずれ纏めてみたい」

ということは、まだ書きたかったのだと思う。

この本だけでは終わっていなかったのだろう。

でも、その「いずれ」は来なかった。

 

◆本が出る前に亡くなった

 稗田さん自身も、いつ出版するか、そのタイミングを探っていた。

その間、何もしていなかったわけではない。

ネット上で歴史の講座も始めていた。

 

ところが、本が出版される前に亡くなった。

私は、

「この本、どうなるんだろう」

と思った。

著者が亡くなった。

出版のタイミングも決まっていない。
ほとんど諦めていた。

そのまま原稿だけが残っいた。

 

でも、そうならなかった。

稗田さんの歴史塾の塾生たちが動いた。

「何とか稗田さんの志をつなぎたい」

「クラウドファンディングをやりたい」

「万代宝書房さんも協力してほしい」

という話になった。

それで、この本を出版したいきさつである。

 

◆本人が「伝繋師」と書いていた

稗田さんは、この本を書いた理由について、こう書いている。

特に重点を置いたのが、人知れず歴史に埋もれた出来事や事件、人物です。有名な出来事や偉人の話は教科書や歴史家の本を読めばわかりますよね?
既存の本に書かれていないことを重要視したのです。これらを探し当てた時の快感と感動は忘れません。これらのことが本書執筆の動機の一つです、というより、それが全てです。

「というより、それが全てです」

ここまで言い切っている。

 

そして、こう続く。

このことを自分一人の胸の中にしまっておくのではなく、一人でも多くの兄弟(日本人)に知って欲しい、そして日本人の自信と誇りを取り戻して欲しい。この一念で書きました。

さらに、稗田さんは自分で言葉までつくった。

「伝繋師」

辞書にはない。

稗田さんの造語だ。

知り得たことを伝え、または人と人を繋ぐ達人、という意味を込めてつくりました。私は伝繋師になりたい、そして一人でも多くの志が同じくする伝繋師を増やしたい。

 

私は、ここに一番共感した。

知った。だから伝えたい。

人と人をつなぎたい。

それだけのことなのかもしれない。

 

◆そして、本当に「伝繋」された

稗田さんは、

「一人でも多くの志を同じくする伝繋師を増やしたい」

と書いた。

その稗田さんが亡くなった。

すると、塾生たちが、

「稗田さんの志をつなぎたい」

と言い出した。

あれ?

これって、稗田さんが書いていたこと、そのものじゃないか。

本人がいなくなった後に、本当に「伝繋」が始まった。

私は、そこがおもしろいと思う。

 

◆「正に私の大義達成です」

そして、この本の最後である。

稗田さんは、日本とアジアの歴史について自分の考えを書いたあと、こう結んでいる。

日本の戦争の大義は達成した、とは思いませんか? 第二次世界大戦前はアジアに独立国は日本とタイしかなかったのです。日本のおかげで独立したアジアの国々はみな、日本を母のように慕っています、この事実を全日本人に知ってほしい。それが達成できただけでもこの本を書いた意義があります、
正に私の大義達成です。

 

もちろん、この歴史観については、いろいろな意見があるだろう。

それはそれでいい。

この本を読んで、それぞれが考えればいいと思う。

私がおもしろいと思うのは、そこではない。

稗田さん自身が、

「正に私の大義達成です」

と書いていることである。

 

でも、この時には、まだ本は出ていない。

そして稗田さんは、自分の本が出版されるところを見ることなく亡くなった。

ところが、塾生たちが動いた。

クラウドファンディングをやろうということになった。

万代宝書房も協力することになった。

そして、本が出る。

 

だったら、私は言っていいと思う。

稗田さん、大義達成ですよ。

本人がいないのは残念だけど。

本は出ます。

あとは、この本を読んだ人がどう思うか。

それでいいんじゃないかと思う。

一隅を照らす 日本の歴史

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商品紹介

稗田美喜 (著), 亀谷哲弘 (著) B6 188ページ 私たちが学校で学んだ日本史は、日本の歴史のほんの一部なのかもしれません。 教科書には大きな事件や著名な人物が並びます。その陰には、広く知られることのないまま、それぞれの場所で日本を支え、守り、世界とつないだ人々がいました。 『一隅を照らす日本の歴史』は、そうした人物や出来…

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