「誤字」と「訂正」は同じではありません――本づくりにおける修正について
「誤字」と「訂正」は同じではありません――本づくりにおける修正について
本を刊行したあと、著者の方から「ここを直したい」というご連絡をいただくことがあります。
もちろん、出版社側の校正で見落としてしまった誤字や誤植が見つかることもあります。私たちも、それをゼロだと言うつもりはありません。
間違いがあれば確認し、修正できる機会にきちんと修正する。それは出版社として当然のことだと思っています。
ただ、ここで一つ知っておいていただきたいことがあります。
刊行後に生じる「修正」のすべてが、「誤字」や「誤植」というわけではありません。
実際の本づくりでは、
・出版社側の校正で見落とした誤字・誤植
・当初の原稿に記載されていた事実について、後から訂正が入るもの
・著者ご本人から、刊行後に記載内容の変更を希望されるもの
・文章表現を、より分かりやすく整えるもの
・表記を統一するための修正
など、さまざまな種類の修正があります。
一見すると同じ「文字を直す」という作業ですが、出版に携わる者にとって、この違いはとても大切です。
著者から後日、事実関係の訂正が入ることもあります
たとえば、年齢、年月日、地名、固有名詞などについて、著者からいただいた原稿にある内容が記載されていたとします。
その原稿をもとに編集・校正を行い、本を刊行したあとになって、
「確認したところ、実際には違っていました」
と著者ご本人から訂正の連絡をいただくことがあります。
この場合、読者にとって大切なのは正しい情報ですから、増刷など修正できる機会があれば、当然、正しい内容に直していきます。
ただし、これは出版社が文字を打ち間違えたり、校正で誤りを見落としたりした「誤字・誤植」とは性質が違います。
当初の原稿に記載されていた内容について、その後、事実関係の訂正が入ったものだからです。
どちらも最終的には「本の中の文字を直す」ことになります。
しかし、どの段階で、なぜ修正が必要になったのかは異なります。
文章を整えることも「誤字」とは限りません
もう一つ、分かりやすい例を挙げてみます。
たとえば、
「高校卒業して」
という文章を、
「高校を卒業して」
と整える。
意味そのものは伝わりますが、文章としてより自然にするために助詞を補っています。
これも、単純に一文字を打ち間違えた「誤字」とは性質が違います。
出版の現場では、誤字・誤植を探すだけではなく、表記の統一、助詞の補足、文章表現の調整、事実関係の確認など、さまざまな作業を行っています。
それらをすべて一括りに「誤字」としてしまうと、実際にどの段階で、何が起きたのかが分からなくなってしまいます。
本は、刊行したあとに「もっとこうしたい」と思うこともあります
本づくりには、少し不思議なところがあります。
原稿を書いているときには気づかなかったことが、本になって初めて見えてくることがあります。
何度も原稿を読み、校正を重ねていても、実際に一冊の本として手に取ったとき、
「こちらの表現の方がよかった」
「もう少し説明を加えたかった」
「この言葉は違う言葉にした方が伝わりやすい」
と思うこともあります。
それ自体は、決しておかしなことではありません。
著者にとって本は、自分の思いや経験、知識を世の中に残すものです。
だからこそ、刊行後に「もっとよい本にしたい」という気持ちが生まれることもあるでしょう。
出版社としても、増刷など修正できる機会があれば、必要なものについて著者と確認しながら反映していきます。
ただ、それも「誤字」とは別の話です。
大切なのは「誰が悪いか」ではなく「何が起きたか」
こうした話を書くと、「出版社は責任を逃れたいのか」と思われる方がいるかもしれません。
そうではありません。
出版社側に起因する誤字や誤植があれば、出版社として真摯に対応すべきだと考えています。
編集者も出版社も人間ですから、間違えることがあります。
同じように、著者も人間ですから、記憶違いや確認不足が生じることがあります。
大切なのは、
「誰が悪いのか」
を争うことではなく、
「実際には何が起きたのか」
を正確に確認することではないでしょうか。
当初の原稿には、どのように書かれていたのか。
編集の過程で、どのような修正が行われたのか。
校正の段階では、どうなっていたのか。
刊行後、どのような訂正や変更の申し出があったのか。
そこを一つひとつ確認する。
出版社にとって、それはとても大切なことです。
なぜなら、本は一度世に出ると、長く残るものだからです。

本は、著者と出版社が一緒につくるもの
一冊の本は、著者だけでも、出版社だけでも完成しません。
著者が伝えたいことを書き、編集者がそれを読者に届く形へ整える。
何度も原稿を読み、著者と確認し、校正を重ね、印刷・製本を経て、ようやく一冊の本になります。
だから私たちは、本づくりを「著者と出版社の共同作業」だと考えています。
そして共同作業だからこそ、何か訂正が生じたときにも、
「誰の責任なのか」
だけを考えるのではなく、
「どうすれば、より正確な本にできるのか」
を一緒に考えることが大切なのだと思います。
もちろん、出版社に起因する誤字や誤植があれば、真摯に対応します。
一方で、当初いただいた原稿について後から事実関係の訂正が入った場合や、刊行後に著者から変更の希望があった場合には、その経緯も含めて正確に扱う。
その双方を曖昧にしないこともまた、出版社としての責任だと私たちは考えています。
本は、一度世に出ると長く残ります。
だからこそ万代宝書房は、著者の思いを大切にすると同時に、事実も大切にする。
そんな本づくりを、これからも続けていきたいと思っています。
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