出版相談で、私が最初に「どんな本を出したいですか?」だけを聞かない理由
出版相談で、私が最初に「どんな本を出したいですか?」だけを聞かない理由
出版相談に来られた方から、当然のように聞かれることがあります。
「いくらで本を出せますか?」
「何冊作れますか?」
「何ページくらいになりますか?」
もちろん、どれも大切なことです。
でも、私は出版相談の最初から、費用や部数、ページ数の話をすることはあまりありません。
その前に聞きたいことがあるからです。
「なぜ、この本を出したいのですか?」
そして、もう少し話が進むと、こんなことも聞きます。
「この本を一番誰に読んでもらいたいですか?」
「その人に何を届けたいですか?」
「読んだ人がどうなったら、『この本を出してよかった』と思えますか?」
万代宝書房にとって、出版は本を作ることだけではないからです。
「何を書くか」より「なぜ残すのか」
出版相談では、最初に「どんな本を書きたいですか?」と聞きます。
すると、
「自分の経験を書きたい」
「これまで研究してきたことをまとめたい」
「仕事で培ってきたノウハウを伝えたい」
いろいろな答えが返ってきます。
そこで、私はもう一歩踏み込みます。
「なぜ、それを今、本にしたいんですか?」
ここから話が変わることがあります。
長年の経験を次の世代に伝えたい。
同じことで苦しんでいる人の役に立ちたい。
自分が見つけたことを、死んだあとにも残したい。
世の中にどうしても伝えておきたいことがある。
つまり、著者が最初に口にした「○○についての本を書きたい」という言葉の奥に、本当の出版理由が隠れていることがあるのです。
私は、そこを一緒に探したいと思っています。
本を出すことが目的ではない
万代宝書房には、
「人類の宝になる本しか出さない」
という考えがあります。
少し大げさに聞こえるかもしれません。
しかし、これは本気です。
自慢話を一冊にしたい。
とにかく著者という肩書が欲しい。
本を出せば簡単に儲かると思っている。
そういう目的であれば、万代宝書房でなくてもいいと思っています。
もちろん、「人類の宝」といっても、何十万人、何百万人に読まれる本である必要はありません。
たった一人の人生を変える本かもしれない。
家族や子孫に残すべき記録かもしれない。
ある分野で何十年も積み重ねてきた知恵かもしれない。
世の中ではまだ知られていない、一人の人間の経験かもしれない。
著者と私たちが、
「これは残す価値がある」
と思えるものを、本という形にしたい。
それが万代宝書房の出版です。
紙か、電子か、PODかは、そのあとです
ですから私は、最初から「紙の本にしましょう」とは言いません。
電子書籍が合う人もいます。
PODが合う企画もあります。
まず電子書籍として世に出し、反応を見ながら紙の出版につなげる方法もあります。
大切なのは、
「何で出すか」ではなく「何のために出すか」。
目的が決まれば、手段はあとから考えられます。
電子書籍だから価値が低いわけでもありません。
やるのであれば、
「これなら紙でも出した方がいいのではないか」
と言われるくらいのものを作ればいい。
出版形態から考えるのではなく、残したいものから出版の形を考える。
私はその順番が大切だと思っています。
自分でも本を作れる時代に、出版社は何をするのか
今は、自分一人でも本を作れる時代です。
AIもあります。
電子書籍もあります。
PODもあります。
「出版社を通さなくても本は作れますよね?」
と聞かれれば、
「作れますよ」
と答えます。
では、それでも出版社が存在する意味は何でしょうか。
その一つが、
第三者の目です。
家族や友人は、著者本人を知っています。
だから、原稿を完全な読者として読むことは難しい。
「あなたらしくていいね」と思うかもしれないし、逆に本人を知っているからこそ厳しくなりすぎることもあります。
出版社は違います。
「初めてこの人を知る読者には、どう見えるだろう」
「ここは伝わるだろうか」
「著者が本当に言いたいことは、こちらではないか」
そんな目で原稿を見る。
著者自身が気づいていなかった価値を見つけ、それを読者に届く形へ翻訳する。
私は、そこに出版社を通す大きな意味があると思っています。
本は、出版社だけが売るものではない
一方で、出版相談では少し厳しい話もします。
本は、出版社に預ければ全部売ってもらえる商品ではありません。
特に今の時代は、著者自身も届ける人になる必要があります。
「私は書きます。あとは全部出版社で売ってください」
という考え方であれば、万代宝書房とは相性がよくないかもしれません。
しかし、
「このことをどうしても残したい」
「必要としている人に自分でも届けたい」
という方であれば、私たちも一緒に考えます。
出版記念の場を作ることもできます。
配信番組で本について語ってもらうこともできます。
SNSの活用について考えることもできます。
本を講演や仕事につなげることもできます。
実際、万代宝書房から出版したことをきっかけに、テレビ出演につながった人、行政から講演依頼が来た人、中堅・大手出版社から商業出版の話が来た人もいます。
本が「名刺」の役割を果たすこともあります。
ただし、本を出せば自動的にそうなるわけではありません。
本はゴールではなく、その人の活動を広げる一つの手段なのです。
他の出版社にも相談してください
出版相談で、私はときどきこう言います。
「他の出版社にも聞いてみてください」
営業として考えれば、変な話かもしれません。
でも、出版は半年、一年と一緒に仕事をすることがあります。
金額だけで決めるものではないと思っています。
他社に相談するなら、ぜひ聞いてほしいことがあります。
「契約したあと、誰が自分と関わるのか」
「実際に編集するのは誰なのか」
「出版後はどのように関わるのか」
「その出版社は、何のために本を作っているのか」
出版条件だけではなく、そこまで聞いた上で選んだ方がいい。
その結果、他社の方が自分に合っていると思えば、それでいいと思っています。
万代宝書房は「契約したらスタート」
私は万代宝書房の社長ですが、編集者でもあります。
出版相談で著者の話を聞き、契約したあとも本の中身を見ます。
私にとって著者は「営業の一件」ではありません。
一人の人間です。
だから、万代宝書房では、
「契約したらスタート」
だと思っています。
極端に言えば、私は著者とは一生付き合うつもりでいます。
本を一冊作って、納品して、それで終わり。
私は、そういう出版をあまりしたくありません。
本を出したあと、その人がどうなったのか。
次に何をしようとしているのか。
また残したいものが生まれたのか。
そこまで含めて、著者との関係だと思っています。
だからこそ、契約前にはお互いを見る必要があります。
著者が出版社を選ぶのと同じように、私たちも、
「この人と一緒に本を作りたいか」
を考えています。
最後に聞くことがあります
出版が決まった方に、私は最後にこんな質問をすることがあります。
「これまで、いろいろな人や会社と仕事をしてきたと思います。その中で、『これをされるのは嫌だった』ということはありますか?」
返事が遅い人は嫌だった。
説明なしに勝手に進められるのが嫌だった。
話を聞いてもらえないのが嫌だった。
人によって答えは違います。
だったら、できる限りそれをしないようにする。
これから長く付き合うのですから、最初に知っておいた方がいい。
本作り以前に、人と人との仕事だからです。
「本を出しませんか?」ではなく、「何を残しますか?」
私は出版相談で、無理に契約を勧めることは基本的にしません。
迷っている人には、
「一度考えてください。やりたいと思ったら連絡してください」
と伝えます。
こちらから追いかけて契約しても、いい本になるとは限らないからです。
著者も出版社も、
「一緒にこの本を作りたい」
と思って始めた方がいい。
だから、万代宝書房の出版相談で本当に話したいのは、
「何ページにしますか?」
「何冊刷りますか?」
ということだけではありません。
あなたは、誰に、何を残したいのですか。
そこから始めたいのです。
本という形は、その答えを未来へ運ぶための手段です。
知恵は、万代の宝。
その人にしか残せないものを見つけ、それを本という形で次の時代へ渡していく。
それが、私たち万代宝書房が考える出版です。
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