「鍵を閉めたかな?」ではない。 「安心したい」が止まらない病気を知っていますか。
「鍵を閉めたかな?」ではない。
「安心したい」が止まらない病気を知っていますか。
出版社には、さまざまな原稿が届きます。
専門家が書いた本。
成功体験を書いた本。
人生を振り返る自伝。
そんな中で、この原稿は少し違いました。
『あれっ、鍵しめたっけ? 強迫性障害と生きるリアルストーリー』の著者・高橋翔太さんは、約20年間、強迫性障害と向き合いながら生きてきました。精神障害者保健福祉手帳を所持し、障害者雇用で働きながら執筆活動を続けています。
強迫性障害というと、「何度も手を洗う人」というイメージを持つ方がいるかもしれません。
しかし、高橋さんは、そういう理解だけでは伝わらない現実を書いていました。
「鍵を閉めたかな。」
「財布をなくしたかもしれない。」
「本当に大丈夫だろうか。」
普通なら数秒で終わる確認が、何十分、時には何時間にもなる。
しかも本人は「そんなことを気にしても意味がない」と頭では理解しています。
でも、止められない。
その苦しさを、飾ることなくリアルに文章にしています。
私が印象に残ったのは、著者がこの本を「治療法を教える本」にしていないことです。
「不安に翻弄され続けた男の脳内」を、そのまま公開する。
それが本書の役割だと語っています。
だから読者は、「こうすれば治る」という話ではなく、「この人の頭の中では、こんなことが起きていたのか」と、当事者の世界を知ることができます。
本書には、「チャックが開いているかもしれない」「鍵を閉め忘れたかもしれない」「財布をなくしたかもしれない」「サブスクを解約し忘れたかもしれない」など、一見すると笑ってしまいそうな出来事が数多く登場します。
しかし読み進めるうちに、笑えなくなります。
それは決して「変わった人」の話ではなく、「安心したい」という誰もが持つ感情が極端に大きくなった状態だからです。
著者自身も、「強迫性障害は珍しい病気ではない」と書いています。
それにもかかわらず、多くの人が「神経質な性格」と誤解し、本当の苦しさが伝わっていない現実があります。だからこそ、この病気をもっと知ってほしいという思いで、この本を書き始めました。
出版をしていると、知識を届ける本にはたくさん出会います。
けれど、人の心を理解するための本には、そう多く出会えません。
この本は、強迫性障害の人だけの本ではありません。
家族、友人、職場の同僚、そして「どうしてそんなことを気にするの?」と思ったことがあるすべての人に読んでほしい一冊です。
理解は、知識だけでは生まれません。
誰かの人生を知ったとき、初めて始まるものなのだと、この本は静かに教えてくれます。
あれ、カギ閉めたっけ?: 強迫性障害と生きるリアルストーリー
商品紹介
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