『つりひろの入院妄想記~一病息災~』
はじめに
「心不全の患者さんです。はい。年は57歳、男性です」
救急隊員が、どこかの搬送先の病院に電話をしている。
「心不全の患者さんって、俺のこと?」私は急に不安になった。
救急外来で某大学病院に行った私の主訴は、右下腹部と鈍痛と熱である。そこで検査・診断を受けたが、私と医師では意見が違った。医師は、「腹部には特に異常は認められない。心臓と肺に持病はありませんか? 飲んでいる薬はありませんか?」と質問をしてくる。ベットの横では、私に繋がっている機器から心拍数や血圧の上昇を知らせる警報音がけたたましく鳴っている。「私たちの責任上、できるだけ正確な診断をしたいので、検査をします」と救急医に言われ、X線やCT検査を受ける。
彼らが言うには、「肺と腹部に水が貯まっている。不整脈で心房細動がある」というのだ。私に自覚はない。「緊急入院です」と言われ、点滴用の管をもう一本刺し、薬剤を増やし、尿道カテーテルもすると言う。既に、右腕には一箇所刺されていて、そこに2つの袋から輸液が落ちてきている。心電図も血圧計も付けられている。
「わー、スパゲティ症候群だ! このままでは病院に殺される! 一度入院したら、退院できなくなる!」と心の中で叫んだ。
「ちょっと、妻と相談させてください」そう言って、心の叫びを伝えた。結局、仕事の段取りをつけて再度来るので、今日は帰してほしいと懇願することにした。だいぶ厳しく言われたが、承諾書にサインすることで、二日分の薬をもらって帰ることになった。
民間治療家に相談したら、「大丈夫!」とのことだったが、具合はよくならない。妻と友人に説得され、二日後に入院を覚悟して病院に行った。救急医から、「だから言ったでしょ!」とさんざん嫌味を言われ(「こんな時に言うなよ。心臓が余計悪くなるよ。何であれ、あんたの言う通り病院に来たんだから)と心の中で叫んでいた)、さらに「あの時なら病室が空いていたが、今開いていないので、どこか病院を紹介するからそっちに行ってくれ」と言われ、「まあ、自業自得だ」と自分を慰め、紹介状を書いてもらう時間を待った。
大学病院から、転院先への移動する車の中で、冒頭の電話での会話を聞いたのである。不整脈とは聞いていたが、心不全とは聞いていなかった。心不全といえば、死ぬ病気だ。重病との認識が低かった私だが、救急車内で話す声を聞いて、ビビったのだ。
こうして私は、二〇一九年の一月中旬~二月初旬まで、心房細動・不整脈で入院し、心臓カテーテルアブレーション治療手術を受けることになったのだった。
私のささやかな自慢は、健康だった。入院したことは一度もなく、捻挫以外では病院に掛かったこともなく、1ミリも体にメスが入ったこともなく、薬も大人になってからは飲んだこともなかった。
この危機感に、私のささやかな自慢が、一度に全て失われたのだった。
本書を読めば分かるが(分かりたくない人は、読まずに買うだけにとどめておくとよい)、病院も入院生活も知らない私は、この間に脳裏に色々なことが駆け巡った。
その頭によぎった諸々のことを思い出して書きつづったのが本書である。自分は何者かを知ることが悟りだとしたら、私は一歩悟りに近づいたかもしれない。悟りに近づきたい方、自分に失望したい方にはお勧めの一冊である。
二〇一九年五月 釣部 人裕
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