AIに本を書かせてみた。そこでわかった「AI出版は簡単ではない」ということ
AIに本を書かせてみた。そこでわかった「AI出版は簡単ではない」ということ
「AIを使えば、簡単に本が書ける」
生成AIが出てきた頃、私もそう思いました。
私は出版社を経営しています。
同時に、自分でも文章を書き、本も出してきました。
だからこそ、生成AIを見たとき、
「これは出版を大きく変えるかもしれない」
と思ったのです。
文章を書いてくれる。
構成も考えてくれる。
要約もできる。
校正もできる。
だったら、本を書くことだって、ずいぶん楽になるんじゃないか。
そんな期待がありました。
実際に、AIに本の原稿を書かせてみました。
ところが、出てきた文章を読んで、私は思いました。
「違うんだよなぁ……」
文章としては、ちゃんとしている。
文法もおかしくない。
それなりに論理も通っている。
きれいにまとまっている。
でも、つまらない。
何より、「これは、私の文章じゃない」と思ったのです。
世の中には、
「AIに指示するだけで本が書ける」
「誰でも簡単に著者になれる」
「短時間で一冊できる」
という話があふれています。
でも、実際に出版社としてAIで本を作ろうとしてみると、そんなに簡単な話ではありませんでした。
なぜなのか。
AIが作った文章には、情報はある。
でも、その人が生きてきた経験がない。
迷ったこともない。
失敗したこともない。
悔しかったこともない。
当然です。
AIは、その人の人生を生きていないのですから。
本というのは、情報を並べればできるものではありません。
「私は、なぜこれを書くのか」
「誰に伝えたいのか」
「何を残したいのか」
そこに著者の体験や思想や感情が入って、初めてその人の本になる。
では、AIは本づくりには使えないのか。
私は、そうは思いませんでした。
むしろ、
「使い方が違うんじゃないか」
と考えるようになりました。
そんなときに出会ったのが、プロンプトエンジニアの高岡拓真さんでした。
高岡さんも、AIが人間に取って代わればいいとは考えていませんでした。
そこで始まったのが、二人での試行錯誤です。
週に一度、Zoomで画面を共有しながら、実際にAIが出した原稿を見る。
私が言います。
「情報は入っている。でも体温がない」
「一般論になっている」
「私が言いたいのは、そういうことじゃない」
すると、高岡さんがプロンプトを直す。
もう一度、AIに出力させる。
私が読む。
また直す。
その繰り返しでした。
途中で私は、本気で思いました。
「これだけ直すなら、自分で最初から書いた方が早いんじゃないか?」
高岡さんにも、そう言いました。
ところが、高岡さんはプロンプトエンジニアとして、プロンプトでどこまで100点に近づけられるのかに挑戦したいと言った。
著者として文章を見る私。
AIをどう動かすかという視点から見る高岡さん。
立場が違ったからこそ、面白かったのだと思います。
そして、試行錯誤を続けているうちに、私たちは一つの考えにたどり着きました。
AIに本を書かせようとするから、おかしくなる。
そうではなく、
AIと一緒に本をつくればいい。
人間とAIのどちらが上なのか、という話でもありません。
それぞれ、得意なことが違います。
AIは、情報を整理する。
構成を考える。
下書きを作る。
別の視点を出す。
そういうことは得意です。
一方、人間には、自分自身の体験がある。
感情がある。
思想がある。
違和感がある。
「これだけは伝えたい」という意思がある。
そこはAIには任せられません。
私たちが実際に行った本づくりも、そうでした。
私が伝えたいメッセージと構造を考える。
高岡さんが、それをAIに伝えるためのプロンプトにする。
AIが文章を出す。
私が読んで、
「ここが違う」
「これはいらない」
「ここが足りない」
と返す。
またプロンプトを直す。
最後は私自身が、加筆し、削り、編集して仕上げる。
つまり、
「AIに書かせた」のではなく、「AIと一緒に書いた」のです。
そこから、私たちはこの方法を、
「AI共創出版」
と呼ぶようになりました。
そして、その試行錯誤そのものを一冊にしたのが、
『AI出版は簡単ではない
AI共創出版~AIと人間が「共に創る」新しい出版モデル』
です。
面白いのは、この本そのものが「AI共創出版」で作られていることです。
構想や素材を私が用意し、高岡さんとの対話を重ね、AIも使う。
そして最後は、私が編集し、加筆し、削り、校正する。
完成までには20回以上のやり取りと修正を繰り返しました。
ですから、この本は、
AIについて外から論じた本ではありません。
自分たちで実際にやってみて、
「これはダメだ」
「これなら使える」
「まだ違う」
「もう一回やろう」
と繰り返した記録です。
私はAIを否定していません。
むしろ、かなり使っています。
今後、AIを使えるかどうかで、仕事の仕方は大きく変わっていくと思っています。
ただし、
AIに任せればいいとは思っていません。
本を書くことまでAIに丸投げしてしまったら、その本はいったい誰の本なのでしょうか。
著者の名前だけが表紙に載っていて、中身にはその人の体験も、思想も、言葉もない。
私は、そういう出版をしたいとは思いません。
出版とは、単に「著者」という肩書きを手に入れるためのものではないと思っているからです。
私たち万代宝書房は、
「知恵は万代の宝。百年、千年と語り継がれる人類の叡智を、本にして残す」
という思いで出版をしています。
だから、AI時代になっても、ここだけは変えたくありません。
むしろAIが文章を書ける時代になったからこそ、
「あなたは、何を残したいのですか?」
という問いが、以前より重要になったのではないでしょうか。
AIは文章を作れる。
でも、
何を書くのか。
なぜ書くのか。
誰に届けるのか。
何を後世に残すのか。
それを決めるのは、人間です。
『AI出版は簡単ではない』。
タイトル通り、本当に簡単ではありませんでした。
でも、簡単ではなかったからこそ、
AIに書かせるのではなく、AIと共に創る。
というところまでたどり着くことができました。
この本は、AIの使い方を解説する本ではありません。
AI時代に、
「著者とは何なのか」
「本を書くとは何なのか」
を、私自身がもう一度考え直した本でもあります。
次世代型AI編集者の条件: 「AI時代の編集者」では足りない
商品紹介
AI出版は簡単ではない AI共創出版~AIと人間が「共に創る」新しい出版モデル
商品紹介
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