出版社から見たブランディング・マーケティング・広告の三角形

出版社から見たブランディング・マーケティング・広告の三角形

出版社という仕事をしていると、

「いい本を作れば売れるはずだ」

という言葉を、何度も聞きます。

そして同時に、

「いい本なのに売れない」

という現実にも、何度も直面します。

このズレは、才能や努力の問題ではありません。

多くの場合、ブランディング・マーケティング・広告の役割が整理されていないことから生まれています。


出版における三つの役割は「三角形」で考えると分かりやすい

出版社の立場から見ると、

ブランディング・マーケティング・広告は

上下関係ではなく、三角形の関係にあります。

どれか一つが欠けると、本は長く届きません。


① ブランディング:出版社と著者の「イメージ」をつくる

出版社にとってのブランディングとは、

「どんな本を出す出版社なのか」

「この出版社の本なら、読んでみたい」

という信頼と期待の蓄積です。

同じテーマ、同じジャンルの本であっても、

  • どの出版社が出しているのか

  • どんな編集姿勢なのか

  • 過去にどんな本を出してきたのか

によって、受け取られ方は大きく変わります。

これは著者も同じです。

著者の名前そのものが、すでにブランドになっている場合もあれば、

一冊一冊の積み重ねで、少しずつイメージが形成されていく場合もあります。

出版社の仕事は、

本を作ることだけでなく、「読まれる前の信頼」を育てることでもあります。


② マーケティング:本と読者が出会う「仕掛け」をつくる

マーケティングは、「売るためのテクニック」だと思われがちですが、

出版社視点では、

本と読者が自然に出会うための導線設計です。

  • 誰に読んでほしい本なのか

  • その人は、どこで情報を探しているのか

  • どんな言葉に反応するのか

これを考えずに、

「とりあえず出して、あとは運任せ」

では、今の時代はほとんど届きません。

同じ本でも、

  • 書店で出会うのか

  • Amazonで検索されるのか

  • SNSや講演から流れてくるのか

によって、設計はまったく変わります。

出版社のマーケティングとは、

買わせる仕組みではなく、買いたくなる流れをつくることです。


③ 広告:買う「理由」を明確にする

広告は、三角形の中でいちばん分かりやすい役割です。

「この本を、今、手に取る理由」を伝えること。

  • なぜ今なのか

  • なぜ他の本ではなく、これなのか

  • 読むと、何が変わるのか

出版の世界では、

「広告は下品だ」「中身で勝負したい」

という声もあります。

しかし現実には、

理由がなければ、買うという決断は起きません。

広告とは、

本の価値を歪めるものではなく、

読者の背中をそっと押す役割なのです。


三角形の中心にあるもの

──出版社が本当に目指すゴール

この三角形の中心にあるのは、

単純ですが、とても重い言葉です。

「買ってもらうこと」

ただし、出版社の場合、

それは「一度売れれば終わり」ではありません。

  • 読まれる

  • 内容が届く

  • 信頼が残る

  • 次の本につながる

この循環まで含めて、

はじめて出版の仕事は完結します。

 


出版社として大切にしたい共通原則

ブランディング、マーケティング、広告。

どれをやるにしても、出版社として外せない共通点があります。

  • 誰に向けた本なのかを、曖昧にしない

  • 出すメッセージを、一貫させる

  • 短期的な結果だけを追わない

出版は、即効性のある商売ではありません。

だからこそ、

時間を味方につける設計が必要になります。


出版とは「思想を流通させる仕事」である

出版社は、単なる製造業でも、販売代理店でもありません。

著者の思想や問い、経験を、

社会に流通させる仕事です。

だからこそ、

ブランディング・マーケティング・広告は

「やるか、やらないか」ではなく、

どう整合させるかが問われます。

三角形のどこかが突出しても、

どこかが欠けても、本は長く残りません。

出版社として目指すのは、

売れる本ではなく、

売れ続ける構造を持った本なのだと思っています。

関連情報

コメントは受け付けていません。

特集