オリジナルなんてない?──経験を重ねて生まれる本当の「私だけのオリジナル」
オリジナルなんてない?──経験を重ねて生まれる本当の「私だけのオリジナル」
「オリジナルなんてない」と思う理由
新しいことを始めようとしたときに、「これは誰かがもうやっているかもしれない」と不安になったことはありませんか?
ブログ記事、ビジネスアイディア、書籍のテーマ、さらには趣味の作品まで…。
調べれば調べるほど、すでに似たようなものが存在していて「結局、自分が考えることなんて二番煎じなんじゃないか」と落ち込んでしまう。そんな経験をした方も多いでしょう。
でも実は、それは当然のことなのです。
人類は長い歴史の中で、数え切れないほどの知恵や工夫を積み重ねてきました。
その膨大なストックの中で「完全に新しいもの」を見つけるのは、ほぼ不可能に近いのです。
すべてのアイディアは誰かがすでに出している
音楽の世界を例にしてみましょう。
クラシック音楽も、ロックも、ジャズも、すべては先人たちが築いた流れを受け継ぎ、アレンジや組み合わせで発展してきました。
ビートルズが登場したときも、彼らがゼロから音楽を発明したわけではありません。ブルースやロカビリーなど、既存の要素を吸収し、自分たち流に表現したからこそ新しい響きになったのです。
ビジネスの世界も同じです。
「サブスクリプションモデル」や「シェアリングエコノミー」も、突如生まれたものではなく、昔から存在していた考え方をインターネットや時代の流れに合わせて再構築したにすぎません。
つまり、どんな分野でも「完全に新しいアイディア」は存在しません。
あるのは「既存の要素をどう組み合わせ、どう語り直すか」という工夫だけなのです。
それでも「自分の経験」が加わると唯一無二になる
では、すべてのアイディアが既存のものなら、私たちの出番はないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
大切なのは、「誰かのアイディア」ではなく「自分の経験と重なったアイディア」こそがオリジナルになるということです。
例えば、「失敗から学ぶ大切さ」というテーマは世の中にあふれています。
でも「あなたが経験した失敗」と「そこから立ち直った物語」は、あなたにしか語れません。
同じ「失敗談」であっても、背景や感情、学びのプロセスは人それぞれ違います。
小さな日常の気づきでも構いません。
「雨の日に子どもと傘を取り合って気づいた親子関係の大切さ」や「深夜の残業でふと立ち止まり、働く意味を考え直した瞬間」──これらは誰の人生にも一度きりしかない体験です。
その体験を通して語る言葉が、唯一無二のオリジナルになるのです。
オリジナルとはゼロからではなく「重なりの中」にある
オリジナルを「何もないところから突然生まれるもの」と考えると苦しくなります。
でも実際には、オリジナルは既存の知識やアイディアと、自分の体験や感性が重なったときに初めて形になるのです。
たとえるなら料理です。
同じレシピを使っても、作る人によって味が変わります。
調味料の配分、盛り付け方、食卓の雰囲気、どれもその人らしさを映し出します。
文章や発想も同じです。
材料は似ていても、そこに「あなた」というスパイスが加わることで、全く別のオリジナルに変わります。
あなたの語りが誰かにとっての発見になる瞬間
「自分なんて特別じゃない」と思う人もいるかもしれません。
しかし、あなたにとって当たり前の経験や考え方が、他の人にとっては新鮮で大きな発見になることがあります。
・毎日の習慣から生まれた小さな工夫
・仕事の中で積み重ねてきた成功と失敗
・人間関係の中で悩み、乗り越えてきた出来事
これらを言葉にしたとき、そこには確かに「あなたにしか書けない価値」が宿ります。
その語りは、まだ出会っていない誰かにとっての希望や学びになるのです。
本や記事の読者は「まったく新しい理論」だけを求めているわけではありません。
むしろ「同じことで悩んでいる人のリアルな声」や「自分と似た状況からの突破口」に共感を覚えるものです。
歴史や文学から見る「オリジナル」の正体
文学史を振り返っても、「オリジナル」と呼ばれる作品は、すべて過去の蓄積の上に成り立っています。
夏目漱石の小説も、シェイクスピアの戯曲も、古典や当時の思想の影響を受けながら、自分の体験や視点を織り込んで生まれました。
漱石の『坊っちゃん』は「型破りな若者が地方に赴任する話」ですが、そのモチーフはすでに多くの小説にありました。
しかし彼自身の教師としての経験とユーモアが重なったことで、唯一無二の名作となったのです。
つまりオリジナルとは「まったくのゼロ」ではなく、「過去の積み重ね×自分の視点」でできあがるもの。
歴史に名を残す作品ですら、その法則から逃れることはありません。
今日からできる「自分だけのオリジナル」を育てる一歩
完全な新しさを追い求めて立ち止まる必要はありません。
大切なのは「既存のテーマに、自分の経験や感性を重ねて語ること」です。
今日からできる小さな工夫はこんなことです。
・誰もが知っているテーマに、自分の体験を加えて書く
・読んだ本や観た映画の感想を「自分ならどう活かすか」と結びつける
・過去の失敗を振り返り、そこから学んだことを人に伝える
こうした積み重ねが、オリジナルを「幻想」ではなく「現実」として形にしていきます。
最後に
「オリジナルなんてない」という言葉は、冷たく突き放すものではありません。
むしろそれは、「安心して発信していい」という励ましの言葉です。
すべてのアイディアはすでに世の中に存在します。
けれど、自分の経験を交えて語れば、それは誰にも真似できない「本当のオリジナル」になる。
あなたの人生には、あなただけの物語が刻まれています。
その物語を言葉にすることこそ、最大のオリジナル。
だからこそ、迷わずに一歩を踏み出してみてください。
オリジナルはゼロから生まれるものではなく、あなたの人生そのものから生まれるのです。
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