第2回:AIにできること・できないことを整理する
第2回:AIにできること・できないことを整理する
~「80%までは可能」の限界と、AIの適性ジャンル~
◆ はじめに|AIは何でもできる?──過大評価の時代に
生成AIが進化するなかで、「本も記事も企画も、すべてAIが作れる」と感じている人は少なくないかもしれません。
実際、SNSや広告では「AIにタイトルを入れれば、目次から本文まで一発で出せます!」という売り文句を見かけます。
しかし、ここで冷静に考えるべきなのは──
AIに何ができて、何ができないのか”を正しく把握すること。
この回では、私自身が実際に生成AIと向き合ってきた経験をもとに、
AIが得意な分野と不得意な分野、そして「80%はできても、残り20%は著者の仕事」という現実を整理します。
◆ AIが得意なこと【◎活用すべきジャンル】
- 過去情報の整理・再構成
・歴史・偉人・理論・有名なトピックの要約
・一般的なトレンドやFAQ、よくある問題への回答
→ ネット上に既に出回っている情報を、整った文章にまとめるのは非常に得意です。
▼ たとえば:
「孫子の思想を10項目で解説してください」
「腸活の基本的な方法をまとめてください」
→ こうした問いには、短時間でそこそこの“読み物”が出てきます。
- How to本・入門書的な構成案の生成
・「〜のやり方」「〜の基本」といった形式
・見出し、目次、ステップ形式の構成
▼ たとえば:
「初心者向けのランニングガイドを作って」
→ 1章:準備するもの/2章:フォームの基本/3章:ケガ予防…といった定型の構造を提案してくれます。
- 定型文・案内文・メール文の自動生成
・メール・報告書・紹介文・プロフィール文など、型がある文章 → ビジネスの現場では、この点で非常に役に立ちます。
✕ AIが苦手なこと【△限界がある・人間が必要】
- 新しい理論や価値観の提示
AIは、既存情報の平均化によって文章を組み立てます。
したがって、“まだ誰も書いていない”視点や理論を語るのは構造的に不可能です。
▼ NG例:
・「これまでにない健康論をAIに書かせる」
・「独自の思想を体系化してもらう」
→ 最も“それらしい”ことは書けますが、「その人だからこそ言えること」は、AIには生み出せません。
- 現場感のある取材・一次情報の提示
本当に刺さる文章には、体験・現場・温度があります。
AIは現場を知らず、現実の空気も感じられないので、
取材・インタビュー・実体験をもとにした本の執筆には不向きです。
▼ たとえば:
・「刑務所内の実態を取材した記録」
・「スタートアップ創業者の実話に基づく成功記」
→ こうした“一次情報”を求める原稿は、AIでは書けません。
- 文体の個性・語り口の温度
AIの出す文章は、一見なめらかでも“誰でもない口調”になりがちです。
・読みやすいけど、印象に残らない
・情報はあるけど、感情が伝わらない
◆ つまり、その著者“らしさ”が薄れるということです。
文章の中に“魂”や“体温”を入れるのは、やはり人間の仕事です。
◆ 私自身の実感:「80%までは可能。でも…」
私は、AIを活用しながら原稿を作るプロセスを何度も試しています。
確かに、アウトライン設計やベース文案のたたき台としては非常に優秀です。
実際、原稿の8割くらいまでは「使える」ものが出てくることもあります。
ただし、そこから“本”としての筋を通し、主張を持たせ、仕上げる”のは人間の仕事です。
AIはあくまで共同執筆者でもあり、補助者でしかないというのが私の結論です。
◆ まとめ|AIと“何を書くか”で役割は変わる
生成AIは、テーマや目的によっては非常に強力な相棒になります。
ただし、それはあくまで「道具」として正しく使ったときに限ります。
まとめ表:AIの得手・不得手
次回:「AIを使いこなすには“著者の頭”が必要だ」
最終回では、「AIを活用しながら、どうすれば“著者らしい本”が書けるのか?」をテーマにお届けします。
キーワードは「プロンプト設計」「素材の選定」「アウトライン構築」です。
関連情報