◆出版業界の現実~出版社が持つ矛盾
◆出版業界の現実~出版社が持つ矛盾
普通、初版本というのは1000冊から3000冊です。
ケースバイケースですが、1冊本を書くのに、普通、1年くらいで書け、半年ぐらいかかって原稿を書いて、あと編集にかけまして、それから、印刷にまわり、製本にまわり、それから日販とか、トーハンの流通にまわりまして、書店に出る。
書店の一般論を言いますと、毎日毎日、梱包で100冊ぐらい、本が届きます。100種類ぐらい来るわけです。
日本には出版社が数限りなくあります。そして、出版社が本を新しく出しますと、それを見本本といいますか、贈呈本といいますか、いろんな名前で日本の有名な書店に、一方的に送りつけるケースもあります。
また、著名な作家が書いた本とか、著名な出版社が出した本は、ちゃんと売ってくださいという形できます。それも委託なのです。代金を先にくださいというのはないです。
だから、有名な書店には、段ボールでいくつも来るわけです。
限りなく、取次や出版社から、勝手に送り付けて来るわけです。
その中から、店員がどうするかというと、梱包をといて、書店の台に載せるわけです。
有名な本とか、新聞に出ていた本とか、力のある出版社の本は、平積みといいまして、お客さんの目に見えるところに、平たく本を置くわけです。
3つに分けられるのですが、中間くらいの本、要するに、この人の本は売れていたよねとか、また書いたのだとか、名のとおった出版社からきた本などは、義理もありますので、あいているところを見つけて、縦に置くわけです。本の背表紙しか見えないということです。
超有名な本は、新刊書案内というコーナー、または、今月の新刊書というところに、1週間なり2週間に限って置くわけです。
私が書店営業をしていたときの話をしますと、一番有名な本は平積みで、一番見えるところに出す。その中でもトップは、何とかコーナーなのです。
要するに、1人の作家の本を5冊なり、10冊なりまとめまして、そこに旗を立てるというやつです。これ以上の扱いはないわけです。
いわゆる平積みにする。もう30冊もボーンと積み上げると、誰でも振り返ります。なにごとかと、一応手にします。本屋に来た人は皆、まずそれを見ます。買う買わないは別として、手にさわります。それが目につくわけだし、目につくところに置いてあるわけです。
2つめの流れは、縦刺しといって、背表紙だけ見えるところに、そっと置くというもの。スペースがあいておれば、今月の新刊書本というコーナーに、5日とか、3日とか、とにかく値打ちの、値打ちといえば別ですが、知名度の低いものから、姿を消していくわけです。もっと低いやつは、最初からそういうところには、出してくれない。
3つめのパターンは、実は、残酷物語でありまして、梱包をといてくれないのです。来たまま、2、3日倉庫に置いておいて、そのまま送り返すのです。
バックヤードに入れば、段ボールが積まれています。
それでも、取次も、出版社も、何も言えない。
だって、ただ売れたら売ってくださいと言って、送りつけているだけですから。
売れなかった、置くところがないのですよ、と言われれば、それでおしまいなのです。
だから、書店のキイワードは、置く場所がない、です。
これは何を意味するか?
要するに、本屋さんは、本を売るのが商売ですから、売れなければ話にならない。
◆だから、売れる本しか置く場所はないのです。
売れる本とか何か。売れることがわかっている本なのであります。すなわち、有名な作家、話題になっている本であります。
だいたい、どんな本を買いたいかがわかっている人というのはいないのです。
本は山のようにあるわけです。もう、海岸の砂浜に指輪を落としたようなのを探すくらい大変なのです。
だから、いい本というのは、一生に何度か出会えばいい、と言われています。いわゆる、座右の書でありまして、この本をもって歩きたい、一生もって歩きたいという本との出会いは、一生にそう何度もないわけです。
あなたも体験上、わかりますよね。
忘れえぬ本。あの本と出会って私の人生は変わったのよ、というのは、そうないわけです。枕元に置いて寝たいような本は、もう、出会いなのです。恋人と出会うようなものです。確率としては、ほとんどないわけです。
だから、どうするかというと、新刊書案内、新聞の欄が頼りなのです。
最近では、話題の本とかいって、週刊誌でもやっています。だから本を買って、本の紹介を読むという、そういう時代なのです。あまりにも多くて、選びようがない。どうやって出会ったらいいの。これが、悩みなのであります。
本当は、人は本を読みたい!のです。
だいたい、学校へ行く最大の目的は、読みたい本が読めるようになることです。
就職だけが楽しみで学校へ行っている人なんてほとんどいないです。
勉強をする喜びの最たるものは、自分の読みたい本が読めるようになることです。
しかし、本屋さんの言い分は、置くところがない、です。
取次からトラックで送りつけて来た本を、心ならずも梱包もとかずに送り返しているという、うしろめたさがあるにもかかくぁらず、だからといって、直接、営業に行くと、忙しいと嫌われます。
これをクリアすると、数日は並べてくれます。
1人の作家にとって、自分の本が書店に並ぶなんて、もう失神するくらい大変なことなのです。わかりますか。
日本というのは、超エリートばっかりいますから、本を出したい人、作家になりたい人、単行本を出したい人は、もう数えきれずいるわけです。原稿をびっしり書いて、自らその原稿を抱えて、日本中の出版社をまわるわけです。企画書を送付するわけです
では、お話の最後に、出版社としての悩み事を2つ話しておきます。
それは、品切れになることです。本を売る人は、毎日、本を売っていますから、品切れということに対して、そんなにショックというのはないのです。ああ、切れていたのか、ぐらいのものです。しかし、買う人にとっては待てないのです。
皆さんもそういう体験はないですか。
買いたい本が、あるはずの書店に、たとえば、新聞の広告を、はさみで切って、これ今日の朝みたのですよ、もう書店にあるでしょ、と言ったとき、書店主が、2週間後ですよ、と応対してきたという体験。
本の広告というのは、2週間前に出るのですよ。だから待ってください。という応対をしてきたら、あなたはどう思いますか。裏切られたと思いませんか。
2週間も前に広告なんかするなよな、と思う。なぜかというと、2週間も待てないのです。皆さんだって恋愛しているとき、どうですか。
今日の夕方、デートする予定だったけど、ちょっとねえ、仕事が入っちゃってごめんね。ああわかった、明日ね。いや、2週間後ね。そんなの恋愛じゃないですよ。
私は、本と出会うというのは、恋愛以上の恋愛です。なぜなら、恋愛は、手を握ったり、肩に手を置けばすみますが、本はそうではないです。あなたの人生を変えます。
もう一つは、返品です。
たとえば50冊おいてもらったとして、30冊売れた。残りの20冊は返品されてくるのです。そんな書店が何件もあるので相当な冊数が在庫になります。
在庫切れは起こしたくないから、書店には送るのが、売れ残りは出版社に返品される。業界にはベストセラー倒産という言葉があるくらいです。
ベストセラーになって、増刷したところ、途中で売れ行きとまり、返品の山、そおれで、倒産するのです。
私はジャーナリストでもなるので、色々な分野から、真実であろう情報を発信していくし、出版社として、著者の持つ真実であろう情報を発信していくわけです。
世の中を変えられるのは、国民ですから、正しい情報というのを分かち会わなきゃいけない。
その矛盾の中にいるのが万代宝書房です。
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