元に戻って、どうする?

元に戻って、どうする?

 

退院して、1週間ほど経った。

心拍数は安定している。

少しずつ仕事もしている。

まだ疲れる。

眠くもなる。

集中できる時間も、入院前ほど長くない。

まあ、徐々に元に戻していけばいい。

でも、元に戻って、どうする?とも思う。

仕事も元通り。

人付き合いも元通り。

生活習慣も元通り。

酒も元通り。

やっていたことも全部元通り。

それが「回復」なのか?

なんか違う。

そう思い始めたのは、退院する前だった。

今回、救急車で運ばれて、入院した。

予定は全部止まった。

仕事も止まった。

酒も止まった。

人にも会わない。

最初は、考えることもできなかった。

ベッドに寝て、目を覚まして、また寝る。

その繰り返し。

でも、心拍数が安定してくると、時間ができた。

いろいろ考えた。

というより、人生の棚卸しをした。

仕事。

人間関係。

生活習慣。

酒。

今やっていること。

これからやろうとしていること。

長く続けてきたこと。

なんとなく続けていること。

付き合いでやっていること。

本当はやりたいこと。

本当はやりたくないこと。

これ、本当にまだやるの?

これは、もういいんじゃない?

これは残す。

これは形を変える。

これはやめる。

そんなことを考え始めていた。

そして退院して1週間。

やっぱり思う。

一回、整理しよう。

いや、整理というより、捨てよう。

やりたくない仕事は捨てる。

なんとなく続けていることも捨てる。

生活習慣も見直す。

酒もそう。

人間関係も整理する。

こう書くと、

「人まで捨てるのか?」

と思う人がいるかもしれない。

そういう意味ではない。

でも、

「今まで付き合ってきたから」

「昔からの関係だから」

というだけで、これからも同じ付き合い方をする必要はないと思っている。

逆もある。

今までそれほど付き合いがなかった人と、これから深く付き合うこともあるだろう。

新しく出会う人もいる。

人間関係だって動いていく。

仕事も同じ。

長くやってきたから続ける。

それだけでいいのか?

もう役割を終えたものもある。

形を変えれば続けられるものもある。

そして、絶対に残したいものもある。

だから、全部やめるという話ではない。

むしろ逆かもしれない。

これから新しい事業も始まる。

新しくやりたいこともある。

だから、入れる場所を作らなきゃいけない。

古いものを抱えたまま、

新しい仕事。

新しい人。

新しいもの。

全部入れようとするから、いっぱいになる。

これ、冷蔵庫と同じだ。

俺は料理をする。

冷蔵庫を開けると、いろいろ入っている。

昨日の残り物。

少しだけ残った肉。

野菜。

いつ買ったんだ、これ?

というものもある。

そこにまた、新しいものを買ってきて詰め込んでも、入らない。

だから、一回整理する。

いらないものは捨てる。

残したいものは使う。

そして、新しい材料を入れる。

それで何を作る?

最初からレシピなんかない。

残っているものを組み合わせる。

そこに新しい材料を一つ入れる。

そうしたら、思ってもいなかった料理ができることがある。

65歳まで生きてきた。

いろんなことをやった。

いろんな人と出会った。

うまくいったこともある。

失敗もある。

会社もある。

本もある。

仕事もある。

人との縁もある。

それを全部捨てて、

「はい、今日から新しい人生です」

という話ではない。

そんなことはできないし、するつもりもない。

残っているものがあるから、次ができる。

ただし、いらないものまで持っていく必要はない。

こんなことを書くと、

「勝手だな」

と思う人もいるだろう。

そうかもしれない。

でも、一瞬とはいえ意識を失った。

救急車で運ばれた。

入院した。

心臓に電気ショックを受けた。

それで退院して、

全部、元に戻します。

それは、変な話だと思う。

病気になって、

「命の大切さが分かりました」

という話でもない。

「心臓が俺に教えてくれました」

とまで言うつもりもない。

でも、

今回の心臓から、俺が何かを学ぶべきだとしたら何だ?

とは考える。

今のところ、俺の答えはこれだ。

元に戻るな。

一回、棚卸しをした。

だったら、捨てるものは捨てよう。

残すものは残そう。

新しいものも入れよう。

そして、

次の料理を作ろう。

それが回復なのかもしれないと思う。

俺にとっては、次のステージなのかもしれない。

何ができるかは、まだ分からない。

でも、

元と同じ料理を作るつもりはない。

 

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