◆ “朝起き”した一日は、神様とデートできるんだよ
◆ “朝起き”した一日は、神様とデートできるんだよ
私は早起きが苦手だった。早く起きる時はあっても仕事があるから、その時間に間に合うように起きていることが多かった。
「早起きは三文の得」ということわざを知っていると思う。
それはそうだろう! と理解はできるが、損しなければ得をしなくても、ゆっくり寝ていたいタイプの人も多いだろう。
もちろん、楽しいことがある朝は、早くても、パッと目が覚めて、気分も良く、すぐ布団とさよならできる。早起きは、その時くらいで、普段は、出勤時間のギリギリまで布団の中だろう。
10年程前の5月のことだ。以前から面識のある60代の男性と一献傾けていた時のこと。
「あのね、“朝起き”をすれば人生が変わるんだよ」
私は、どうせ、説教ぽくなんだろうと思い、話を切るように言った。
「うーん。私、早起き苦手なんですよね…」
「あんたは、人の話をきいとらんなー」
呆れるように言われた。
「誰が、“早起き”と言った? わしは、“朝起き”と言ったんじゃ」
「はい、確かに。だから、“早起き”ですよね」
「違う、“早起き”じゃない、“朝起き”じゃ」
何を言っているのか、訳わからなかった。
「えっ、違うんですか?」
「違う! 早起きは辛い!」
「辛いですよ、どう違うんですか?」
流れで思わず訊いてしまった。
待ってました! とばかりに、彼は説明を始めた。
要は、“早起き”とは、朝早く起きることで、自分の起きたいタイミングとは関係なく、目覚まし時計や誰かに起こしてもらって起きること。
それに対し、“朝起き”は、朝、目覚めたらその時に起きることだと言う。起きるとは、布団やベットから出て、活動を始めることを言うらしい。
私は、彼の術中にはまっていった。
「お話の途中ですが、朝早いって何時ですか?」
「そんなの知るか? あんたが早いと思ったら、早いんだよ。そこじゃないんだよ。起きたくないのに、起されたということじゃ」
私は、更に質問した。
「なるほど、では、朝起きって、3時でも4時でも、目が覚めたら、何時でも起きるんですか?」
「まあ、そうだ。ただ、明らかにトイレに起きた時は別だが…。慣れていくと、それもなくなる。丑三つ時とか言うだろう? 色々な説があるようだが、わしは、午前3時からを朝と定義しておる」
嬉しそうに話す。
「えっ、3時に目が覚めたら、3時に起きて、活動はじめるんですか? 昼間に眠くなってきますよ」
私には、信じられなかった。
「そう思うだろう。それが不思議なもので、その日は、昼寝ができる時間が出来たり、何か上手く時間調整されるんだ。運がよくなったり、良いことが起きるんじゃ。信じるかどうかはあんた次第だが、やってみなさい、人生変わるから」
こんなやりとりであった。
その頃、私は、丁度、人生を何か変えたいと思っていた。何か、特に悪いわけではないが、かといって、良いわけではない。何か、物足りなさを感じていた。
実は、私は「信じるな!疑うな!確かめろ!」をモットーにしている。
この“朝起き”は、お金もかからないし、特に誰にも迷惑もかけない。軽い気持ちでやってみようと思い、妻にだけは、「明日から、“朝起き”を始めるから、朝、目覚めたら、布団出るから心配しなくていいから…」と伝えた。
初日は、6時半に目が覚めた。洗面、着替えをして、妻に行ってくるよと、言い残して、オフィスへ移動。朝、9時の始業の時点で、メールチェック、返信、FBの記事の更新、いいね! など、一通りのルーティンが終わっていた。さらには、今日の予定の一つも終わっていた。
11時になると、午後一の仕事まで終わっていた。仕事量の気分では、15時だ。お昼を食べる頃には、夕方になるだろうと思っていた仕事が終わっている。夕方になって、眠気がしてきたので、15分の仮眠。それで、リフレッシュ。
とにかく、仕事がはかどる。何より、ヒラメキがいい。2日めも、3日めも、同じだった。
三日坊主と言うが、三日間は起きれたというか起きてみたが、4日目は、誘惑に負けて、今まで通りに起きてしまった。
すると、今まで通りというか、仕事がはかどらない。更には、電話が掛かって来たり、急用が入って、段取りが狂う。
5日目は、気を取り直して、再チェレンジ。
朝起きに関して、一進一退が続いた。
目が覚める時間も、午前3時の日もあれば、5時半の日もあるし、6時の日もある。さらには7時の日もある。見事にばらばらだ。
私は彼に、この状況を電話で報告をした。すると、彼は、朝起きにはコツを伝授してくれた。
「いいか、寝室の時計を外すんだ。とにかく目が覚めたら、布団から出る。そして時計のあるところまでいくんじゃ。念のため、保険を掛けておけ。起きないといけない時間の5分後に目覚ましを掛けておくんじゃ。起きたら、それを自分でとめたらいい」
そしてこうも付け加えた。
「人がなぜ、寝て目覚めるかは、よくわかっていなんじゃ。寝ていても、なぜか、目が覚める。なぜか? それがわからない。神様がいるかどうかは知らんが、神様が『お前さん、起きる時間が来たぞ』と知らせてくれて、目が覚める。だから、その瞬間に起きると、その日一日、神様がリードしてくれるんじゃ。しかし、その後に、二度寝すると、神様が『あっ、そう? いいんだよ……、別に。ゆっくり寝てなさい』と言って、神様から見放された一日を送ることになるんじゃ」
確かに、そうだ!と思えた。
“朝起き”した日は、自由に使える時間が格段に増え、好きなことを思う存分でき、集中力と生産性が飛躍的に向上する。体調も良い。さらに、何かしら、良いことが起きたり、トラブル回避が出来たりするのだ。
不思議なのだが、そうなのだ。
私は、24時前後に就寝していたので、“朝起き”をした日の睡眠時間は、当時3時間から6時間くらいになっていた。普段より、睡眠時間が短くなる。
ネットで調べてみると、歴史上の偉人は、けっこう睡眠時間が短かったようだ。エジソンは4時間、野口英世は3時間、ナポレオンは3時間、レオナルド・ダ・ヴィンチは90分だという。
現在、日本で活躍している有名人にも、睡眠時間が短い人がいるようだ。明石家さんまさんは3時間、上戸彩さんは2時間、武井壮さんは45分だと書いてあった。先日、105歳で亡くなった聖路加国際病院名誉教授の日野原重明先生は、基本は4時間半睡眠だったそうだ。
彼らと私を比較すると、別に、私の睡眠時間が足りないということはない。
“朝起き”を始めると、「明日のために、今日は早く寝よう」とか、「自分は7時間寝ないと、調子が悪くなる」とか、「今日はあまり寝ていないから、調子が出ない」とか、そういう考えから解放される。
私は、このことが分かって以来、3日坊主を断続的に継続している。
そうだ一つ、書き忘れた。
彼は、電話を切る前にこう言った。
「“朝起き”した一日は、神様とデートできるんだよ」
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