◆今日は、少しだけ特別な日

◆今日は、少しだけ特別な日
平成19年11月12日午前5時50分、父が同居していたうちで家族全員と手を握られ息を引き取った。子どもたち(当時6歳と3歳)は寝ぼけていたが…。
 その2か月ほど前のある夜。
 翌日、孫のはじめての運動会の日。
 孫が代表で挨拶をするというので、それをみたいと父は張り切って寝た。
 深夜、隣の部屋がもぞもぞ音がするので駆けつけると、父が寝ている時に吐き、食べ物を喉に詰まらせ、もがいていた。
 直ぐに、吐かせ、とりあえず気道は確保。
 その何日か前から、食欲もなく、様子が変だったので、病院に行こうと勧めた。
 しかし、最後まで、病院に行くことを拒み続ける。
 説得するのが大変だった。
 父の病院行く条件は、「担架には乗らない、自分で歩く」ことだった。
 救急車に乗る寸前まで、自分の脚で歩いた。救急隊に人に、触るな!とまで言った。
 病院に行ってわかったことは、肺炎と肝臓がん末期ということ。
 肺炎は治るが、肝臓がんは治療は年齢を考えると困難との診断。
 翌日、私は、息子として正直に告知した。
「親父、肺炎と肝臓がんだって。癌は末期で、治る見込みはないって」
「そうか、あとどれくらい生きられるんだ」
「今日明日ということはない。あとは親父次第だって。桜が見れたらいいね」
(父は、目をつむり、黙っていた。その後目を開け、私の方をみて、クロスを切った)
 「もう少し、世話になるぞ」
(私は、だまって頷いた)
 ICUを出て、普通病棟へ。
「親父、まもなく転院しなければならない。いいね!肺炎は治るから治療に協力してよ」
「わかった」
「親父、どこで死にたい?」
「そりゃ、畳の上がいいさ。お前らが迷惑でなかったら…」
「わかった。その方向で準備するから、とにかく肺炎を治してくれ。会いたい人はいるか?」
「そうだな。可能なら、おにいちゃんだな」
(兄は、マダガスカル島に長期出張に行っていた)
「連絡取ってみるから…」
兄は、1週間後、1週間程度の休みをとって帰ってきた。
兄が帰った後
「最期の別れができてよかった・・・。」
「よかったね!話しできたか?」
「いや、あんまり話さなかったけど、来てくれたからそれでいい。あとはお迎えを待つだけだ」
 数日後、退院許可が出て、自宅へ戻った。
 親父は、その日、在宅医療の医師に対し、「どうしても、耐えられない痛みが出たらモルヒネを頼みます、それ以外は何もしないいいです」と伝え、点滴を拒否し、殆ど何も食べなくなった。
 それから、多くのボランティアに支えられ、約2週間後、
 18年前の今日、だんだんと呼吸がゆっくりとなり、午前5時50分、息を吸うことがなくなった。
 その直後、カーテンの隙間から太陽の光がさし、親父にあたった。
「おー、親父、最期、かっこよすぎ!」
と傍にいた人がみな口にした。
 静かな、別れだった。
 ボランティアをしてくれたみなさん、
 文句も言わず介護してくれた(元)妻に、
 あらためて、お礼を申し上げます。
 本当にありがとうございました。こころより感謝しております。
親父の希望の通りに見送りができ、
死ぬ前に「親父の子どもであることを俺は誇りに思っているよ。あなたが俺の親父でよかった」と伝えられました。
 
 
 
 
 

 

 
 
 

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つりべ みどり (著)   「俺が死んだら、遺骨をお婆ちゃんのお墓と戦友の眠るガ島に散骨してほしい」 2007年に89歳で他界した父 釣部二郎は、第二次世界大戦中にガダルカナル島の戦いを生き延びて奇跡的に帰還を果たしました。父 二郎の足跡をたどりながら、多くの戦友の思いも含めて父 二郎が伝えたかったもの・語りたかったこと…

ガダルカナル島帰還兵が語る!~平和への願い~

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