妻が願った最期の「七日間」

【朝日新聞に掲載された亡き奥さんの最後の願い】

妻が願った最期の「七日間」

 1月中旬、妻容子が他界しました。入院ベッドの枕元のノートに「七日間」と題した詩を残して。

 

 
《神様お願い この病室から抜け出して 七日間の元気な時間をください
一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい 
あなたが好きな餃子や肉味噌 カレーもシチューも冷凍しておくわ》
 妻は昨年11月、突然の入院となりました。すぐ帰るつもりで、身の回りのことを何も片付けずに。そのまま帰らぬ人となりました。
 詩の中で妻は二日目、織りかけのマフラーなど趣味の手芸を存分に楽しむ。三日目に身の回りを片付け、四日目は愛犬を連れて私とドライブに行く。
《箱根がいいかな 思い出の公園手つなぎ歩く》
 五日目、ケーキとプレゼントを11個用意して子と孫の誕生日会を開く。六日目は友達と女子会でカラオケに行くのだ。そして七日目。
 《あなたと二人きり 静かに部屋で過ごしましょ 
大塚博堂のCDかけて ふたりの長いお話しましょう》
 妻の願いは届いませんでした。詩の最期の場面を除いて。
《私はあなたに手を執られながら 静かに静かに時の来るのを待つわ》
 容子。2人の52年間、ありがとう。
 

関連情報

コメントは受け付けていません。

特集