『つりひろの入院妄想記~一病息災~「一」の章』◆とにかく、驚いたのだ~睡眠薬下さい
◆とにかく驚いたのだ~睡眠薬下さい
入院して手術を受け、退院が近づいて一般病棟に移ったとき、驚いたことの一つが「睡眠薬ください事件(勝手にそう呼んでいる)」だった。
大部屋に移った後、同じ部屋の中で夜になるとゴソゴソ動いたり、咳をしたり、唸ったりしている人が二人いた。どうやら眠れないのだなと思っていたら、翌朝その二人が看護師さんに「睡眠薬ください。寝られない。先生に言って!」と言っているのを目にしたのだ。
午後になると医師が来て少し話をし、結局睡眠薬が処方された。しかしその夜も、二人ともあまり寝られた様子はなかった。そして、翌朝には「あの睡眠薬は効かない。もっと強いのを出してくれ」と言うのだ。
同室の人たちが夜眠れないことを知っているということは、私自身も眠れていないのだが、睡眠薬をもらおうと思ったことはなかった。病院にいるのだから、眠れないなら起きていればいい。眠くなったら昼間に寝ればよい、と考えていたからだ。
さらに驚いたのは、その二人が面会に来た家族に「夜眠れない」と話すと、家族も「ちゃんと睡眠薬、もらっているの?」と尋ねていたことだ。すぐに「睡眠薬をくれ」という人が多いことに驚かされた。
私自身は睡眠薬はいらないと思っている。睡眠薬は脳の中枢神経に作用して「気絶」させているに過ぎない。そんな眠りを毎日続けても、身体に良い理由がないと思うからだ。睡眠薬といっても、睡眠の質を改善するわけでも、不眠症を根本的に治すわけでもなく、単に強制的に「気絶」させているだけではないか。本当に治したいのは不眠症そのもののはずだ。
東洋医学には「万病一元」という言葉がある。すべての病気の原因は一つで、血液の汚れから生じる、という考え方だ。確かに血液を作るのは食べ物である。
病気の種類は万を超えると言われており、それぞれに対して様々な薬が処方されている。しかし、昔から「薬なければ病なし」「薬過ぎれば毒となる」「食べ物は薬以上の薬である」など、病気と薬の危険な関係は度々指摘されてきた。
だから、薬は病気を治すものかもしれないが、基本的には体にとって良いものではない。必要最小限の服用に留めておくのが賢明だと思う。
現代人は、頭痛がすれば鎮痛剤、胃がもたれれば胃腸薬、ストレスがあれば精神安定剤、疲れた体には強壮剤、睡眠薬、ビタミン剤など、あらゆる薬を体内に取り込んでいる人が多いのではないだろうか。
「薬を減らしてほしい」「絶対に飲まなければならないのか?」と医師に尋ねるのは、病院では私くらいのものかもしれない。医師や看護師から「極力少なくしますが、入院中は指示に従ってください」と説得され、渋々薬を飲んでいる私とは大違いだった。
医療は、大半が生活習慣病に対して対症療法を行うだけで、症状は軽減しても完治しない。完治したケースの多くは、食生活を含む生活習慣を改めた結果だと思う。健康は、自分自身が主体となってコントロールしていく意識と実行が必要だ。
体調を崩したり病気にかかった場合も、本来人間に備わっている自然治癒力を活かして回復に努めるべきだ。風邪をひいても、一日絶食し暖かくしてぐっすり眠ればたいてい治る。少しの傷なら放っておいてもいつの間にか痕も残らず治る。ストレスで頭痛や胃痛を起こしても、悩み事が解決したりストレスを上手に解消すれば平常に戻る…。このように、私たちの体には自ら病的状態を克服する能力が備わっている。
これが「自然治癒力」と呼ばれるものであり、生物すべてに備わっている力だ。細胞が何らかの原因で正常に活動できなくなった場合、ただちに復元しようとする作用が働く。この自然治癒力は、生体内の防御・修繕システムである。
自然治癒力は条件次第で強くも弱くもなる。病気にかかるのも自然治癒力が低下しているためであり、そんな状態が続くと病気はなかなか治らない。生活習慣病から早く抜け出し健康を維持するためには、自然治癒力を強化することが急務だ。
こんなことを主張する私が、なぜここまで体を悪くしてしまったのか…。お恥ずかしい限りだ。結論を言えば、私は頭での理解に偏っており、体での理解が不足していたのだ。その詳細については、今後改めて書いていくことになるだろう。
入院して改めて実感したことだが、現代(西洋)医学も結局は患者本人が持つ自然治癒力に頼っている。傷が治ったり病気が回復したりするのは、その人に自然治癒力があるからこそだ。
外科医の仕事は、自然治癒力が働きやすいように悪い部位を取り除いたり、傷口を縫合したりすることだ。骨折の場合でも、できるだけ治りやすい形で固定するのが役目であり、骨がつくのはあくまで本人の自然治癒力によるものだ。いくら医師が上手に治療しても回復が遅い場合があるのはそのためだ。
手術や薬の使用もまた、自然治癒力を促進・補助するにすぎないのである。
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