◆加害者家族に支援は必要ないのか?

◆加害者家族に支援は必要ないのか?

「ところで、刑事司法における社会的弱者は誰だと思いますか?」
数年前、ある弁護士と打ち合わせをしている時、訊かれた質問だ。
「そりゃ、袴田さんなどの冤罪被害者じゃないですか?」
「そう思いますか?」
私は、弁護士が改めて何を聞くんだ? と思った。
「だって、やってもいないのに、犯人扱いされて、身柄も拘束されて、袴田さんなんかは、50年以上も“今日、執行されるんじゃないか”という恐怖の中にいるんですから、これ以上のことないんじゃないですか?」
「そうですよね。でもね、私は、最近、もっと弱い人がいると思いはじめたんですよ」
そう言って、彼は、語り始めた、
刑事司法の一番の弱者は「犯罪加害者家族」、それも殺人事件の「加害者家族」ではないかと考えるようになったと言う。
 
冤罪被害者は、それは間違いなく弱者だが、被疑者段階や裁判において、弁護士がつく。
 

しかし、犯罪加害者家族には、弁護士はつかないから、加害者家族の方が、刑事司法的には弱者だと。

 
さらには、加害者本人は、警察に拘束されており、判決後は、刑務所で服役する。確かに、生活は管理・監視され厳しいことは間違いないが、加害者家族は、社会の中で、日常生活を送ることになるので、社会からの厳しい批判、誹謗中傷にさらされ、その生活は、過酷そのものだ。
 
事件に関する報道、警察による近所への聞き込み、警察や検察庁での参考人としての事情聴取、刑事司法の手続きを分からないことへの不安、遺族への対応、メディアからの追跡、他の家族の生活、損害賠償への対応など、自分の職場や近所、親族からのバッシングなど、今までに経験していないことが一夜のうちに突然、襲い掛かってくる。
 
刑事ドラマでは犯人逮捕が、裁判ドラマであれば、判決言い渡しが事件の終結である。しかし、加害者家族にとって、逮捕や判決の言い渡しは事件の区切りであっても、決して終わりではない。
 
確かにそうだ。
 
加害者家族は、大きく次の三つのことに直面する。
1つは、精神面での問題で、世間の目が気になって外出が困難になったり、生活を楽しむことや、犯罪加害者家族であることを秘密にすることに対する罪悪感をおぼえ、犯罪者の血が流れているとして苦悩し、
 
2つには、経済的問題で、一家の支柱を失うことによる生活の困窮、被害弁償金や弁護士費用などの負担、転居費用の負担、失業による所得の喪失などであり、
 
3つには、社会的な問題であり、誹謗中傷やハラスメントを受け、就職、進学、結婚に際して差別を受けたり、学校でのいじめをはじめ、職場や近隣での嫌がらせ等の人権侵害を受け、被害者等からの抗議等を受けることなどである。
 
加害者家族が世間から最も批判されるのが、「普通よりいい生活をしている」と見られる場合だという。あまり報道はされないが、重大事件の「加害者家族」は結構な割合で自殺している。
社会では、家族にも加害者に準じた責任があり、社会的な制裁などは当然であり、被害者の感情も考えれば、個別のケースによって違いはあれども、基本的にはフォローする必要はないと意見も根強い。
 
ある遺族が加害者家族にこう言った
「子どもを返してください。一生かけて償ってください。あなたには、子どもが生きているでしょ。でも、私には、もう子どもいないのです」
 
加害者家族は、罵倒される中、ただただ、頭を下げ、詫びるだけだった、という。
 
弁護士である彼は、この現場に同行していたそうだ。
相談相手もおらず、事件を口に出すこともなく、息をひそめて生きている人がたくさんいる。少なくとも、子どもに罪はない。
これまで、私はそこにフォーカスしてきていなかった。
 
一時保護された子供
 
彼は、続けた。
「この問題を放置していて、いいのかなーと思うんですよ。誰もが、いつ加害者家族になるか、わからない。最近、老人の交通事故も多い。あれも交通犯罪ですからね」
 
私は、まず書籍を数冊買って読んだ。
 
信じるな!疑うな!確かめろ!をモットーにする私は、生の声を聴き始めた。
 
犯罪や非行によって保護観察を受けた者に指導・助言を行い更正を手助けをする非常勤の国家公務員である保護司をしている知人に、現場の生の声を聴いた。
 
犯罪被害者家族であり、犯罪加害者家族でもある知人に事情を話し、それぞれの立場の現状、思いを話してもらった。
リアリティが出る度に、何とかせねばという思いと、私にできるのかという思いが交錯した。
 
そこには、想像を超えた現実があった。弁護士である彼が言った意味がわかりはじめた。
いま日本に欠けていることは、犯罪被害者及び被害者家族を守るために、加害者家族が心得ておくべきことを伝える人がいないということだ。
 
彼に詳細を報告すると、「よくそこまでだどり着きましたね。是非、一緒にやりましょう」と答えてくれた。
こうして、今、犯罪加害者家族が直面している現状に対し、今どのような支援があれば犯罪加害者家族の苦痛を緩和できるのかを考えて、組織的支援に必要な各種の専門家につなぐための、いわば相談者の窓口となり自立できるまで寄り添っていくコーディネーターを始めている。
 
ただし、この組織には今のところ、大きなデメリットが3つある。一つは資金をどう調達するか。もう一つは、全てがケースバイケースであること、そして、3つめは、多くのことが試行錯誤なので、一つひとつに手間がかかるので、最初の段階では、多くの人と関わることできないということだ。
 
家出した人を捜索する警察
 
課題を一つ一つ、クリアしていくことで、『加害者家族支援』は現実のものになる。

冤罪被害者家族は、社会的には加害者家族である

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